MAAAAAC 小倉の美容室 | 北九州小倉北区のサロン

宇田川 直寛の個展″Bule gun″を開催いたします。

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ブルーガンは樹脂で作られた銃の模型であり、実銃を使わないトレーニングで用いられる。 軍の特殊部隊では実戦に備えて何回もの執拗なトレーニングが行われる。実戦は繰り返すことができず、たった一度訪れるだけである。その不可逆性は究極的には死で担保されているので、できる限り想定し、何回も反復し、万全に反応できるようにトレーニングしているのである。それらの精神の根本には、失敗は絶対に許されないという緊張感がある。 こういったトレーニングは型で行われる。銃を抜き、構えて撃ち、体の中心にピストルを引きつけ周囲を確認し、ホルスターに収めるまで。あるいは家屋突入時にどのような足さばきで、どのようにライフルを構え、どのように入室するか。そういった複雑なプロセスを無意識的に行えるまで反復して型化していく様は、武道がかつて戦場で身につけた知恵を後世に伝えていくために型の中に動きを盛り込み、これから戦場を経験するものに叩き込むのとまさしく同じである。最低限、型さえ体が覚えていれば、あらかじめ経験できない一回性の実戦を生き残り、任務を達成するるチャンスがぐっと増えるのだ。型は知恵である。それは人間を記録媒体とした超長期保存可能な記録伝達方法なのだ。 土門拳は、リアリズムと絶対非演出の絶対スナップを掲げ多くの作品を残したが、その作家人生の初期にカメラを扱うトレーニングに打ち込んだ時期がある。彼は一回性のシャッターチャンスを逃さないために、カメラの操作を体に型として叩き込んだ。写真もその時その瞬間にしか訪れない事実である。どれだけ待っても全く同じ瞬間というのは訪れないだろうし、まさしくその場にそのように自分がいなければ、写真は撮れないのだ。その不可逆的な撮影の機会という実戦を逃さないために、彼はカメラを素早く構えて露出と距離を合わせてシャッターを切るという型を体に染み込ませたのだ。そのトレーニングの一端はもちろん彼の弟子にも継承された。 特殊部隊で実銃を用いたトレーニングをしても的を実際の人間にするわけにはいかないし、土門拳もトレーニングでフィルムを切るわけにはいかない。撃たれた人は死んでしまうし、撮影されたフィルムはすでに写真であるからだ。トレーニングはあくまでトレーニングの域を出ない。 ところで私は失敗を嫌う人間である。それは作戦中の特殊部隊の兵士もそうだろうし、撮影中の土門拳も同じだろう。しかし、彼らと私が違うのは、私は徹底的に失敗を避けるために実戦を行わないという選択肢が取れるということだ。私は銃を持つことはないし、リアリズムで非演出のスナップを撮ることもない。任務もなければ、信念もない。実戦がないということは、本当の失敗にたどり着くことはないという事なのだ。しかしそれは同時に本当の達成にもたどり着かないことを意味する。つまりここでは宙ぶらりんの失敗を繰り返すことしか許されていないのだ。

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会場となるMERCYはヘアサロンとしての枠を越え、今までにヘアショーや音楽ライブ、ダンスイベント、写真展などを開催してきました。そして今回は個展第二弾、東京を拠点に活動中の現代写真作家、宇田川 直寛の新作「Blue gun」の個展を開催いたします。MERCYのギャラリースペースで、宇田川 直寛の九州初個展を是非ご高覧ください。

宇田川 直寛 1981年生まれ。主な受賞歴に「Foam Talent 2015」(2015)、キヤノン写真新世紀佳作(佐内正史選、2013)、第8回写真「1_WALL」ファイナリスト(2013)。主な個展に「パイプちゃん、人々ちゃん」( ガーディアン・ガーデン,東京、2018)、「Assembly」(QUIET NOISE,東京、2017)、「7Days Aru / Irukoto」(Goya Curtain、東京、2016)、「テーブルトップ」(Guardian Garden Web Gallery、2014)、「DAILY」(明るい部屋、東京、2010)。グループ展に「Foam Talent」(De Markten、ブリュッセル、Beaconsfield Gallery、ロンドン、2015)など海外のほか、国内では「どうにもならない 」(TALION GALLERY、東京、2017)など。

会期:2019年3月1日(金)-3月31日(日)
開廊時間:11:00-19:00)
休廊日:火曜
観覧料:無料
会場:MERCY(福岡県北九州市小倉北区京町4丁目3-10尾崎繊維ビル2F )
お問い合せ:093-953-6555 | www.mercy-grace.com
※会場はヘアサロンの為、サロンをご利用中のお客様がいらっしゃる場合もあります。